松永勝彦 (元北海道大学水産学部教授)著「森が消えれば、海も死ぬ」によると、明治以降の北海道では、本州からの入植者が増え、燃料や放牧地の開拓のため、森林伐採がおこなわれました。
そのことが原因で、昆布をはじめとする海藻が採れなくなってしまい、魚の成育の場の消滅とともに水揚げも激減し、その結果、漁民は一時的に漁業で生計を立てることができなくなります。
その後、漁民が山に木を植えることで、昆布が生育できる環境や魚が再び戻ってきていることをあげ、いかに森林の機能が大事かということが書かれています。
森林のだいじな機能
① 森林は天然のダムである。
(河川の洪水、渇水を防ぎ、河川水量をできるだけ一定に保つ重要な役割を持っている)
② 森林は海の植物プランクトンや海藻を増やす栄養素を海に運び、食物連鎖によって魚介類を増やす大きな機能がある
③ 河川の恩恵を受けて生い茂った海藻は産卵や稚魚の成育の場となっている
さらに著者は、森林が持っている機能をすべて人為的に行うことなど不可能であることを私たちは認識しなければならないということ、そして植林をして森林を保護するだけで、森林はあらゆる機能を発揮し、海の生物を豊かにし、それが間接的に人間に返ってくると述べています。
漁民が海を守るためには、海のことだけを考えるのではなく、「陸と海を結ぶ生態学」のシステムが理解できたからこそ、山に木を植えることに賛同し行動に移すことができたのでしょう。
これらのことから、私たちが健康や医療のことを考える場合、まず自然の恵み(健康であること)につねに感謝し、便利で安易な方法をだけ追い求めたり、目先のことばかりにとらわれたりするのではなく、ものごと全体を把握し、システムとして理解することが大切なのではないかと思います。
それは、一見すると関係のないように見えることでも、視野を広げることで関係性が見えてくることがあるからのです。
そして、私たちは何か困った現象が起きた場合に、まずその問題(どこにその原因があるか)の認識を共有し、解決していくことが、とても大切なことではないでしょうか。
ちょっと抽象的でわかりにくいかもしれませんが、具体的にそれはどういうことなのか、今後もコラムで伝えていきたいと思っています。