それは一本の歯から始まる:日吉にある歯科医院のブログ

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2010年9月30日

それは一本の歯から始まる

カテゴリー: ドクターコラム — yasuzawa_dc @ 11:29 PM

歯を抜けたままにしている例

歯を抜けたままにしている例

歯を失ったのにもかかわらず、そのまま放置している方や、「入れ歯を作ったのですが、違和感があって今はまったく使っていません」という方が非常に多いのに驚かされます。

たしかに、今はそれほど困ることがないかもしれません。奥歯を失っても、大きく口を開けないと見えませんし、残されている歯で、ある程度ものが噛めますので、そのまま放置してしまうのかもしれません。

しかし、後になってから自分が大きな代償を払うことになるということに、もっと気づいてほしいのです。

なぜならば、歯を失うということは、それがたった一本でも、安定していた歯並びの形は崩れはじめます。かみあわせる相手の歯が挺出してきたり、隣の歯が傾斜してきたり、そして歯の回転などを起こしたりするのです。

最後には、このような歯の位置のズレが顎全体の位置まで影響してくるのです。

これらのことは、まるでオーケストラが奏でるハーモニーのようです。
もし一人でも音程を外した演奏をしてしまうと、全体のハーモニーが崩れてしまうように、一本の歯の噛み合わせがずれてしまうだけで、かみあわせ全体の調和を崩してしまい、顎が偏位してしまうのです。


前々回の「オーガニック・オクルージョン(Organic Occlusion)」において述べたように、特に、歯を失った部分が臼歯部(奥歯)であれば、かみあわせ全体の高さが低くなり、他の歯(特に前歯)にその負担がかかるようになるのです。

具体的には、差し歯やかぶせものが外れる・壊れる、歯が折れる、歯周病になるなどです。

そのことを繰り返していては、一本の歯から始まり、最終的にはすべての歯がなくなってしまうことになります。

顎のズレを改善する治療は、そんなに簡単な治療ではありません。
しかし、それを改善せずにかぶせものや義歯を入れたとしても、噛めない、外れてしまうなど、さまざまな問題を引き起こし、患者さんの負担もさらに増すことになるのでしょう。


ですから、繰り返しになりますが、後になってから自分が大きな代償を払うことにならないよう、これらのことに早く「気づいて」きちんと治療することが賢明なことであると思います。

2010年8月24日

開咬(Open Bite)について (かみあわせ)

カテゴリー: ドクターコラム — 安澤歯科医院 @ 4:21 PM

図1:重度な開咬

図1:重度な開咬

右の写真のように、臼歯(奥歯)は、咬んでいるのに、前歯が噛みあわせることができない状態を開咬(Open Bite)といいます。

図1~図3まで、臼歯部(奥歯)しか接触していない重度な開咬から犬歯の部分が接触していない軽度な開咬(隠れ開咬)まで、その状態はさまざまです。

前回のコラムオーガニック・オクルージョン(Organic Occlusion)で、前歯にはあごを動かす時、顎を誘導する役割があるとお話をしました。

しかし、この開咬(Open Bite)の方の場合、上下の前歯は全く接触していないため、顎をうまく誘導することができません。

そのため、臼歯(奥歯)に相当な力の負担がかかってしまうのです。

ですから、このような噛みあわせの方は、歯のトラブルが非常に多いのです。

つめもの・かぶせものが外れやすかったり、歯の根の病気になりやすかったり、
歯周病になるリスクも非常に高いのです。


図2:顎偏位を伴った中程度の開咬

図2:顎偏位を伴った中程度の開咬

また、顎の筋肉が疲労しやすく、顎関節への負担も大きいことから顎関節症にもなりやいこともあげられます。

そして歯のトラブルばかりではなく、その他の口腔の機能にさまざまな影響を及ぼします。

ひとつには咀嚼の問題です。上下の前歯が噛みあっていませんので、前歯で噛み切ることが難しく、あまり噛まずに飲み込んでしまうのです。

そして、二つ目には発音の問題です。どうしても息が漏れやすく舌足らずな発音になってしまいます。

さらに、三つ目には口呼吸の問題です。本来、呼吸は鼻を使ってするものですが、前歯が開いた状態になっていると、お口を閉じることが難しく、口呼吸をしてしまうのです。つねにその状況になりますと、お口が乾燥しますので、虫歯になりやすい環境になります。

また口呼吸は免疫低下の原因といわれていますので、全身の健康のことを考えても、口呼吸しないようにしなければなりません。

その治療法ですが、かみ合わせの改善はいうまでもありませんが、同時にお口の周りの筋肉が弱い方などは、口腔筋機能訓練(MFT)も併用して治療が必要となるでしょう。

図3:軽度な開咬「隠れ開咬」

図3:軽度な開咬「隠れ開咬」

いずれにしても、もしあなたがこのかみあわせだとしたら、今後さまざまな問題を抱える可能性がありますので、早めに治療した方がよいでしょう。

開咬Open Biteの問題点
  • かぶせものや詰め物が外れやすい
  • 歯の根の病気になりやすい
  • 歯が破折しやすい
  • 虫歯になりやすい
  • 歯周病になるリスクが非常に高い
  • あごの筋肉や関節に負担になりやすいため、顎関節症を引き起こす可能性が高い
  • 咀嚼障害
  • 発音障害
  • 口呼吸による免疫低下

2010年7月22日

オーガニック・オクルージョン【Organic Occlusion】とは (かみあわせ)

カテゴリー: ドクターコラム — 安澤歯科医院 @ 6:08 PM

わたしたち人間には、親知らずの歯を除くと、上下の顎にそれぞれに14本、計28本の歯があります。 お口を閉じたときには、それらの上下の歯が接触することになりますが、その接触する動作や関係のことを、かみあわせ(=オクルージョン)といいます。

そして、上下の歯をかみあわせた時には、おおよそ自分の体重と同じ力が歯にかかっているといわれています。さらに歯ぎしりや、くいしばりをしているときは、もっと強力な負荷が歯にかかっているのです。

そのため、くいしばりの時には、臼歯(奥歯)が前歯を保護し、歯ぎしりをしているときには、前歯が臼歯(奥歯)を保護しているのです。

これら相互に保護しているかみあわせのことをオーガニック・オクルージョン(有機咬合)といいます。

臼歯(奥歯)にはかみあわせの高さを維持するという役割があります。歯をかみあわせたときの強力な力に対して、臼歯(奥歯)は骨に強固に結合して、前歯を守っているのです。

しかし、何らかの理由(虫歯になってしまった、歯周病で歯が動く、歯を失ってしまった、かみあわせが悪くなってきたなど)で、臼歯(奥歯)の噛み合わせの高さが低くなってしまった場合、前歯が強く当たってくるようになります。

このことは前歯にとっては、かなりの負担になります。前歯が欠けてしまったり、または差し歯がとれてきたり、挙句の果てには、歯周病になってしまい、前歯がぐらぐら動き始めるようになるのです。

「前歯はとても大切なので、なんとかもたせるようにして欲しい…」と希望される患者さんがいらっしゃいますが、もし前歯を大切にしたいと思うならば、奥歯を大切にしなければなりません。



そして前歯には、あごを動かす時、顎を誘導する役割があります。
とくに顎を側方に動かすときは、なるべく臼歯(奥歯)が接触しないように、前歯がうまく誘導しないといけません。

なぜならば、臼歯(奥歯)どうしで歯が当たってしまうと、歯に相当な負担がかかるだけではなく、顎の筋肉や関節までも負担がかかってしまうからです。


いままでの歯科医療では、虫歯があったら削って詰めるなど、治療に対する考え方の範囲がせまく、比較的簡単に考えがちです。


しかし私たちの口腔の機能は、じつは想像以上に複雑で、システム全体として捉えないとなかなか理解ができません。

そのため、天然の歯を守るためや、何度も治療を繰り返さないためには、このような自然のシステムを理解することが非常に大切なことなのです。

2010年6月26日

森と海の関係から学ぶこと(コンセプト)

カテゴリー: ドクターコラム — 安澤歯科医院 @ 9:49 AM

松永勝彦 (元北海道大学水産学部教授)著「森が消えれば、海も死ぬ」によると、明治以降の北海道では、本州からの入植者が増え、燃料や放牧地の開拓のため、森林伐採がおこなわれました。

そのことが原因で、昆布をはじめとする海藻が採れなくなってしまい、魚の成育の場の消滅とともに水揚げも激減し、その結果、漁民は一時的に漁業で生計を立てることができなくなります。

その後、漁民が山に木を植えることで、昆布が生育できる環境や魚が再び戻ってきていることをあげ、いかに森林の機能が大事かということが書かれています。



森林のだいじな機能


①   森林は天然のダムである。
(河川の洪水、渇水を防ぎ、河川水量をできるだけ一定に保つ重要な役割を持っている)


②   森林は海の植物プランクトンや海藻を増やす栄養素を海に運び、食物連鎖によって魚介類を増やす大きな機能がある

③   河川の恩恵を受けて生い茂った海藻は産卵や稚魚の成育の場となっている

さらに著者は、森林が持っている機能をすべて人為的に行うことなど不可能であることを私たちは認識しなければならないということ、そして植林をして森林を保護するだけで、森林はあらゆる機能を発揮し、海の生物を豊かにし、それが間接的に人間に返ってくると述べています。

漁民が海を守るためには、海のことだけを考えるのではなく、「陸と海を結ぶ生態学」のシステムが理解できたからこそ、山に木を植えることに賛同し行動に移すことができたのでしょう。

これらのことから、私たちが健康や医療のことを考える場合、まず自然の恵み(健康であること)につねに感謝し、便利で安易な方法をだけ追い求めたり、目先のことばかりにとらわれたりするのではなく、ものごと全体を把握し、システムとして理解することが大切なのではないかと思います。

それは、一見すると関係のないように見えることでも、視野を広げることで関係性が見えてくることがあるからのです。

そして、私たちは何か困った現象が起きた場合に、まずその問題(どこにその原因があるか)の認識を共有し、解決していくことが、とても大切なことではないでしょうか。

ちょっと抽象的でわかりにくいかもしれませんが、具体的にそれはどういうことなのか、今後もコラムで伝えていきたいと思っています。

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